コラム

ジャポニカ米の試験栽培(1)

ミャンマーは言うまでもなく米が主食の国であり、輸出にも力を入れている。かつては最大の米の輸出国だったこともあるが、諸般の事情で今は当時のような状況にはない。しかし、最近は100万トンを超える輸出を行うようになっている。

ゲノム・レベルでの専門家を含む関係者等ではじめて訪緬したのが2012年で、関係諸機関や企業を訪問して調査を行った。契約農場(Contract Farming)の方法で大手企業主導による機械化と大規模栽培を進めて増産・増収をはかろうとする動きが一方にあり、マイクロファイナンスなども活用されていた。当時、確認したところでは、灌漑がまだ十分ではないところがあり、その整備が増産には重要だときいた。政府の農業関係の研究機関では、国内の高品質米の改良に取り組んでおり、風雨が強いと稲が倒れやすいため茎を短くすることと、収穫後の稲穂が脱粒しやすいため振っても簡単には落ちないようにするということが課題となっていた。日本から同行した専門家によると、これらの改良は既に日本でもやっており、特に技術的に難しいというものではないということだった。(▼上写真はジャポニカ米14種の試験栽培に関するMOUに調印するエデングループのチッカイン会長)

輸出用米の品質管理等々、実際の輸出に際しては不足している設備や技術など米以外の問題が山積している様子だったが、今回のテーマは穀倉地帯であるエヤワーデー地域で日本の米を栽培して収穫することができるかどうか、どういう種類の日本米がもっとも同地での栽培に適しているのかということを実際に栽培してテストするということにあった。

このため関心を示してくれたミャンマー国内でも有数の契約農場方式での米栽培を実施しているエデン・グループの企業との間でジャポニカ米14種の試験栽培に関するMOUを締結することになり、エヤワーデー地域のダニビュの水田で試験を行うことができるようになった。

▼写真はダニビュの水田で作業中の地元農民。ちなみに、試験はミャンマー側の要望により、ジャポニカ米の栽培と収穫だけではなく、肥料や農薬も含めた、日本での米栽培の方法と、ミャンマーのそれを比較するということも含まれることになり、ジャポニカ米14種にミャンマーの高品質米3種をそれぞれ別々の水田で栽培することになった。

ミャンマーでの米栽培は雨期と乾期の最低2回は可能だが、実際には雨期が中心となる。雨期は6月くらいから本格化するが、ここでは7月はじめに田植えが行われた。少し遅いような気がしていたが、実際には10月にはもう収穫可能な品種のものもあり、14種が出そろうのを待ち11月初めに収穫することとなった。

このダニビュの試験栽培のため日本から1人が訪緬し、期間中地元に泊まり込んで毎日午前と午後の2回、観察リポートを送るという作業に従事した。日本式とミャンマー式の栽培方法で、合計17種の稲について各別に?種類ごとに?成長の記録を写真やメジャー等々を使って測定し、それを毎日2回、メールで日本に送るというもので実際にやってみると、かなり面倒で大変な作業である。しかも、ここにはPC用にインターネット環境は整備されておらず、また、近くにインターネットカフェとようなものもない。どうやったかというと、携帯電話の国際電話回線を利用した。この方法で大量のデータを送るのは少し工夫も必要であり、簡単ではない。現場にはりついていたのが農業の専門家ではなく、コンピュータの専門家だったことが幸いしたといえる。

試験栽培用の水田に張った水の温度は指を入れる熱い感覚があり、事前にイメージしていたような冷たい感じはない。日本米がこんなに暖かい水で実をつけるのかとか、まずくなるのではないかとか、心配するくらいだったが、ちゃんと実をつけたし、試食会で口した限りでは美味しかった。水温はかなり高くても米は育つらしい。もともと南方から来ているから当然かもしれないが、日本の水田とはかなり違う。

▼写真上は、農民にジャポニカ米の栽培等について説明している様子。下はエデン・グループの企業が有する精米設備の一部。この会社は、ヤンゴン市郊外の工業団地に巨大な、エアコン付倉庫2つを有している。

試験を行ったAyawardyのDanubyu

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